IPO 上場審査

上場審査ではどんなことを聞かれるの?審査の内容について解説します

上場審査とは、企業が証券取引所に新規上場(IPO:Initial Public Offering)を申請する際に、取引所がその企業に対して実施する審査プロセスのことです。上場審査は、企業が証券取引所の上場要件を満たしているかどうかを確認し、投資家に適切な情報が開示されているかを評価するために行われますが、実際にどんなことを審査されるのか知りたいという方向けに解説していきます。

 

この記事を書いている人

筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。

 

上場審査では以下の項目がチェックされる

  1. 企業の財務状況
  2. 経営陣の資質
  3. 企業の規模や業績
  4. 内部統制
  5. 情報開示

 

企業の財務状況

上場審査においては、一の部(有価証券届出書、有価証券報告書)等の財務報告書を審査し、企業の業績や財務安定性を評価します。

上場する企業は有価証券報告書等で、企業の財務状況や業績について開示する必要があります。

有価証券報告書等の開示書類には、上場企業が定期的に提出する財務報告書の一種で、企業の財務状況、業績、リスク要因などを記載しています。投資家は、有価証券報告書を分析することで、以下のような情報を判断し、投資判断に役立てます。

財務状況

企業の財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を分析し、企業の収益性、資本構成、資金繰りなどを評価します。

業績

売上高や営業利益、純利益などの業績データを分析し、企業の成長性や収益力を評価します。

利益率

売上高に対する営業利益率や純利益率などの利益率指標を分析し、企業の収益性を比較します。

財務指標

自己資本比率、流動比率、総資産回転率などの財務指標を分析し、企業の財務安定性や効率性を評価します。

配当

配当金額や配当性向、配当利回りなどの配当に関する情報を分析し、企業の株主還元政策を評価します。

事業リスク

報告書に記載されたリスク要因を分析し、企業が直面している市場リスク、業種リスク、経営リスクなどを評価します。

企業の事業戦略や展望: 企業の事業計画や成長戦略、将来の見通しを分析し、その実現可能性を評価します。

これらの情報をもとに、投資家は企業の価値やリスクを判断し、投資判断を行いますので上場審査においては、投資家が判断することができるレベルの財務状況であるのかどうかを審査します。

 

 

経営陣の資質

上場審査では経営陣が適切な経営能力を持っており、適切なコーポレートガバナンスが確立されているかを確認します。
経営陣が企業を適切に運営し、企業価値を維持・向上させる能力があるかどうかを評価をします。上場企業は、一般投資家が株式を購入し、その運用リスクを負う対象となるため、証券取引所は、企業の経営陣が適切な資質と経験を持っていることを求めます。
具体的には以下のような項目を評価し上場企業の経営者として経営陣の資質が適切かどうかを評価します。

経営陣の信用性

取引所は、企業の経営陣が信頼できるかどうかも評価します。これには、経営陣の経歴や過去の実績、企業のコーポレートガバナンスが考慮されます。企業経営陣が透明性を持ち、適切な意思決定が行われていることが求められます。

業績の維持・向上

経営者の資質が高いほど、企業の業績を維持・向上させる戦略や意思決定を行う能力が高まります。投資家は、経営陣がビジョンを持ち、効果的なリーダーシップを発揮して企業価値を高めることを期待しています。

リスク管理

経営者が適切な資質を持っている場合、企業のリスク管理が適切に行われる可能性が高まります。これにより、事業活動におけるリスクの発生や拡大を防ぎ、企業価値を維持することができます。

投資家とのコミュニケーション

経営者の資質が高いと、投資家とのコミュニケーションが円滑に行われることが期待されます。これにより、投資家が企業の経営状況や戦略を理解しやすくなり、適切な投資判断ができるようになります。

信用力の維持

経営者の資質が高い企業は、株主や投資家、取引先からの信用を得やすくなります。これにより、資金調達や取引条件の改善が期待され、企業の成長につながります。

 

上場審査では、経営者の資質を評価することで、企業が投資家に対して適切な価値を提供できるかどうかを判断します。そのため、経営者の資質は、上場審査において重要な要素の一つとなります。

 

 

企業の規模や業績

日本の株式市場のメイン市場である東京証券取引所では、上場企業が一定の規模(時価総額要件、流通株式比率要件等)や業績(利益要件)を持っていることを形式要件として求めています。

企業の規模や業績と上場審査の関係は、企業が株式市場に上場する際に、取引所がその企業の健全性や信用性を評価するために行われる審査プロセスです。企業が株式市場に上場するためには、取引所の基準を満たす必要があります。この基準は取引所ごとに異なりますが、一般的に以下のような要素が考慮されます。

企業規模

上場する企業の規模は、時価総額や資本金、組織ごとの従業員数などで測定されます。取引所は、一定の規模を持ち適切な内部管理体制を有している企業かどうかを審査しています。

業績

上場企業は、過去数年間の財務成績が一定の水準以上であることが求められます。これには売上高、利益、キャッシュフローなどが含まれます。取引所は、安定した業績を持つ企業であるかを審査しています。

企業の規模や業績が一定の水準を満たしていることは、上場審査においては形式要件として必ず満たす必要があります。規模や業績が良好な企業は、投資家からの信頼も高まり、資金調達や株価の安定性にも寄与することが期待されます。

また、企業が上場することで、多くの投資家から資金を調達できるようになります。これによって、企業は成長戦略を実行しやすくなり、さらなる規模拡大や業績向上が期待されます。さらに、上場企業は一定の情報開示が義務付けられるため、投資家は企業の状況をより詳細に把握できるようになります。

 

 

内部統制

企業が適切な内部統制システムを持っているかどうかを評価し、不正や違法行為のリスクが最小限に抑えられているかを確認します。

内部統制と上場審査の関係は、企業が株式市場に上場する際に、取引所がその企業の経営管理体制やリスク管理能力を評価するために行われる審査プロセスです。内部統制は、企業の業務プロセスや情報システム、経営陣の意思決定に関する制度や手続きを指します。これには、財務報告の正確性、法令・規則の遵守、業務の効率・効果性、資産保護などが含まれます。

上場審査では、企業の内部統制が適切かどうかを評価します。取引所は、内部統制が整備されている企業を好ましく評価し、上場審査において重要なポイントとなります。内部統制が適切に機能している企業は、以下の点で評価の対象となります。

財務報告の正確性

内部統制が適切に機能している企業は、財務報告の正確性が高まります。これにより、投資家や株式市場からの信頼が向上し、上場審査の際にも好ましい評価を受けることができます。

法令・規則の遵守

適切な内部統制は、企業が法令や規則を遵守することを確保します。これは、上場審査の際に重要な要素となります。企業が法令や規則を遵守していることが確認されると、取引所はその企業を信頼性が高いと評価することができます。

業務の効率性

内部統制が整備されている企業は、業務の効率が向上します。これにより、企業の業績が安定し、上場審査においても好評価を受けることができます。効率的かつ効果的な業務運営は、企業の成長や収益性に寄与し、投資家からの評価も高まります。

経営資源の保護

適切な内部統制は、ヒト・モノ・カネ・情報等の経営資源の保護にも役立ちます。資産が適切に管理され、不正行為や損失のリスクが低減されることで、企業の信頼性が向上し、上場審査での評価も高くなります。

コーポレートガバナンス

内部統制は、企業のコーポレートガバナンスの一部として機能します。適切な内部統制が整備されている企業は、経営陣や取締役会が効果的に機能し、透明性が高まることで、上場審査でも好評価を受ける可能性が高まります。

内部統制は上場審査において重要な要素となります。適切な内部統制が整備されている企業は、財務報告の正確性、法令・規則の遵守、業務の効率・効果性、資産保護、およびコーポレートガバナンスが向上し、これらの要素が上場審査での評価に大きく影響します。

 

情報開示

企業が適切な情報開示制度を確立しており、投資家に対して十分な情報が提供されているかを評価します。

情報開示と上場審査の関係は、企業が株式市場に上場する際に、取引所がその企業の情報開示体制や透明性を評価するために行われる審査プロセスです。情報開示は、企業が株主、投資家、市場関係者に対して、自社の財務状況や業績、リスク、経営陣の情報などを公開することを指します。適切な情報開示は、企業の透明性を高め、投資家が企業の価値を正確に評価できるようになります。

上場審査では、企業の情報開示体制が適切かどうかを評価します。取引所は、情報開示が適切に行われている企業を好ましく評価し、上場審査において重要なポイントとなります。情報開示が適切に機能している企業は、以下の点で有利となります。

信頼性の向上

適切な情報開示が行われることで、企業は投資家や市場関係者からの信頼を獲得しやすくなります。これは、上場審査の際にも好ましい評価を受けることができます。

投資判断の助け

情報開示が適切に行われることで、投資家は企業の業績やリスクを正確に把握し、投資判断を行いやすくなります。これにより、株価の安定性が向上し、上場審査においても好評価を受ける可能性が高まります。

情報開示によるコーポレートガバナンスの強化

適切な情報開示は、企業のコーポレートガバナンスを強化する役割を果たします。透明性が高まることで、経営陣や取締役会が効果的に機能し、企業の運営が改善されることが期待されます。

以上のように情報開示は上場審査において重要な要素となります。適切な情報開示体制が整備されている企業は、取引所や投資家からの信頼を得やすく、上場審査での評価も高くなります。そのため、情報開示は企業が株式市場に上場する際に重要な役割を果たします。企業が適切な情報開示を実施していることが確認されると、投資家や市場関係者は企業の価値を正確に評価しやすくなり、企業は資金調達や成長の機会を享受できるようになります。

また、上場企業は、定期的な財務報告や業績予想の開示、重要事項の適時開示など、一定の情報開示が義務付けられます。これによって、投資家は企業の状況をより詳細に把握でき、リスク管理や投資判断が容易になります。

さらに、情報開示は、企業のイメージやブランド力にも影響を与えます。適切な情報開示を行う企業は、市場からの評価が高まり、その結果、企業価値や株価にもプラスの影響があることが期待されます。

したがって、情報開示と上場審査の関係は、企業が株式市場での信用性や資金調達能力を向上させるために重要な要素となります。適切な情報開示体制が整備されている企業は、上場審査において好評価を受ける可能性が高まり、株式市場での成功が期待されます。
さらに、情報開示は株式市場における公平性と透明性を促進します。すべての投資家が同じ情報にアクセスできることで、不公平な取引やインサイダー取引のリスクが軽減され、市場全体の信頼性が向上します。これは、上場審査を通過し、上場企業として運営される際にも重要な要素となります。

また、情報開示は企業のコミュニケーション戦略の一部でもあります。企業が自社のビジョンや戦略、業績に関する情報を適切に伝えることで、投資家や市場関係者との関係を強化し、企業価値を高めることができます。

上場審査では、企業の情報開示体制や経営陣が情報開示に対して真摯に取り組んでいるかどうかをチェックします。企業が情報開示に関するルールや規制を遵守していることが確認されれば、上場審査での評価が向上することが期待されます。

 

まとめ

上場審査を通過することで、企業は証券取引所に上場し、その株式が一般投資家に公開されることになります。これにより、企業は資金調達を行い、事業拡大や経営の安定化を図ることができます。また、投資家にとっては、上場企業が一定の基準を満たしていることが保証されるため、投資判断に役立ちます。

上場審査の過程ではかなり幅広い分野において深度ある審査が行われますのでしっかりとプロジェクトチームを組成して準備をすることを強くおすすめします。

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