IPO 上場審査

役員の親族が会社にいると上場審査においてどのような影響があるのか?具体的な事例を交えて開設します

上場を目指す会社必見!社長の配偶者が役員にいたら上場できないのか?審査目線で解説しますの記事では、社長の配偶者が役員にいたら審査にどのような影響があるのかについて開設しました。今回は、これから上場準備を開始しようと思うけど、会社に役員の親族が従業員として勤務しているケースで、具体的にはどこまではセーフでどこまでいくとNGなのか?という疑問について審査目線で解説していきたいと思います。
※事例についてはこれまでに上場した会社からヒアリングした内容や筆者の経験を元に多少事実内容を改変して解説していますが、必ず審査に通過することをお約束するものではありません。

この記事を書いている人

筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。

 

この記事の内容

  1. 役員の親族が社内にいても直ちに上場できないわけではない
  2. 上場審査通過事例1
  3. 上場審査通過事例2
  4. 上場審査NG事例1
  5. 上場審査NG事例2
  6. 上場審査におけるポイントまとめ

役員の親族が社内にいても直ちに上場できないわけではない

役員の親族が社内にいても上場できたケースはあります。その具体的な判断基準は以下の点を総合的に勘案して判断されます。

  1. 結婚した時期(入社前か入社後か)
  2. 対象従業員の役職
  3. 対象従業員と役員の管掌部門の関係
  4. 対象従業員の入社の経緯
  5. 対象従業員の人事考課

これらを総合的に勘案して判断されます。では具体的な事例を交えて解説していきます。

 

上場審査通過事例1

営業部門における部長職に従事していたケース

  • 役職:部長
  • 所属部門:営業部門
  • いつ結婚したか:入社後
  • 東証審査における総評:入社の経緯が一般従業員と同様であり、事後的に役員と結婚し役員配偶者となったこと、結婚後の勤務条件についても結婚前と特に変わった点はなかったこと、役員とは関係の無いセクションで業務に従事していたことから、特別待遇を受けているわけではないと認められ、審査に通過。

上場審査通過事例2

商品企画部門における係長職に従事していたケース

  • 役職:係長
  • 所属部門:商品企画部門
  • いつ結婚したか:入社前
  • 東証審査における総評:当該従業員は、入社前から役員の配偶者であった。入社の経緯として役員からの紹介で面接を行ったが、面接を行ったセクションは役員の管掌部門とは異なる部門であり、採用プロセスに一切関与していないこと、募集していたポジションに対して従業員が求められるスキルを十分に有していたこと、入社後も役員とは業務上の関与が無い業務を行っていたこと等から、特別待遇を受けているわけではないと認められ、審査に通過。

上場審査NG事例1

経理部の課長職に従事していたケース

  • 役職:課長
  • 所属部門:経理部
  • いつ入社したか:入社後
  • 東証審査における総評:当該従業員は入社後に役員と結婚した。役員の管掌部門と所属部門は別の部門ではあったものの、経理部門における財務課の課長であったことから出納業務に関与していることから、証券審査の段階で配置転換の提案※があり別の部門に異動となった。

※証券会社や東証は、「異動させてください。」や「これはNGです。」という断定的な言い方はしません。「この件について、御社が妥当だと考える見解をお聞かせください。」というような曖昧な言い方をしてきますので、公開引受部門の担当者と、よくよくコミュニケーションを取ることを心がけましょう。

 

上場審査NG事例2

経理部次長並びに子会社監査役に従事していたケース

  • 役職:親会社経理部次長・子会社監査役
  • 所属部門:経理部・監査役
  • いつ入社したか:入社前
  • 東証審査における総評:当該従業員は親会社において経理部の次長職に従事していた。元々は、創業当初から代表者である配偶者とともに二人三脚で会社を成長させてきた経緯があり、上場を目指す過程で経理部長を外部から招聘し、対象従業員は次長職となった。また、子会社の監査役を兼務していたが監査役業務は高い独立性が求められることから、社長の配偶者であった対象従業員からの交代を求められた。

上場審査におけるポイントまとめ

これまでの事例を整理すると項目ごとのポイントは以下のとおりとなります。

結婚した時期(入社前か入社後か)

どちらかと言えば、入社前に結婚しているケースの方が質問が増える傾向にあります。入社前に結婚している場合、入社の経緯でどうしても紹介というケースが増えるためです。
とはいえ直ちにそれだけでNGになるわけではないので後述する入社の経緯等に気をつけましょう。

対象従業員の役職

役職が高ければ高いほど、論点になりがちです。ただし単に役職が高いからといって直ちにNGになるというわけではなく業務内容によります。例えば、監査役や内部監査室等高い独立性が求められるポジションの場合はほぼ間違いなく論点になるでしょうか。

対象従業員と役員の管掌部門の関係

対象従業員と役員とが同じ部門で業務をしている場合は論点になりがちです。実態として対象従業員が本当に優秀であった場合で、かつ不公平なく正しく業務を実施していたとしても、客観てに見ると何らかの特別な配慮がなされいるのではないか?という邪推が働くことはあります。したがって上場を本気で目指すのであれば役員と対象従業員は別のセクションに配置することが望ましいと言えます。

対象従業員の入社の経緯

役員の配偶者の入社の経緯が一般従業員と同等の入社経緯である場合には論点になりづらいですが、紹介による入社である場合は論点になる可能性があります。そのため、採用プロセスにおいては、配置予定のセクションは役員の管掌部門とは別のセクションにすること、面接や書類先行等には役員は一切関与しない等、公平性を担保するための措置を取ることが望まれます。

対象従業員の人事考課

入社後においても、極力業務上で役員と対象従業員の関わりが無いようにすることが望まれます。したがって役員が人事担当役員である場合はどうしても対象従業員の人事考課に関与してしまうため、役員の管掌部門を変更する等の措置を取ることが望ましいです。また、人事担当役員でない場合でも対象従業員の人事考課について特別な配慮がなされるようなことが無いように、公平性を担保することが求められます。

 

まとめ

今回は上場準備をするにあたり、会社に役員の親族が従業員として勤務しているケースで、具体的にはどこまではセーフでどこまでいくとNGなのか?という疑問について審査目線で解説してました。

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