少し古いレポートですが、2015年12月に野村総合研究所とオックスフォード大学による共同レポートが発表され「日本の49%の仕事をAI(人工知能)やロボット等で代替できるという」センセーショナルな内容で世間を騒がせました。
このレポートの中では「10~20年後に」49%の仕事が代替される可能性があることについて言及していました。レポートが発表されてから、記事執筆時点(2023年3月)で約7年が経過しており、Xデータの到来まで残り3年ということになります。
今回は、そんなXデーの到来まで残り3年となった現在、本当にAIはあなたの仕事を奪うのか?今からあなたが習得すべきスキルは何なのかについて書いていきます。
この記事の信頼性
筆者は20代前半で人材系のベンチャー企業に就職し、20歳で大学中退し社内ベンチャーの企画で起業プロジェクトに参画、20代後半で独立しその会社を20代後半でバイアウトしました。
バイアウトした後はベンチャー企業のCFOに就任し、管理部門の従業員が0だったところから一から管理部門を立ち上げ、30代前半にCFOとして、IPOプロジェクト責任者としてグロース市場にIPOさせることに成功しており、現在ではAIやRPA等を活用して、業績が拡大しても管理部門の人員を増やさないで済むチーム運営を行っております。
もちろん最初からうまくいっていたわけではなく、数々のトライアンドエラーを繰り返して現在のチームの運営体制を構築してきたため、この記事においてはどのようなトライアンドエラーがあったのかも含めて紹介していきます。
この記事でお伝えしたいこと
- AIやRPAはまだまだ万能ではない
- AIやRPAの導入により単純作業系はどんどん無くなっていく
- AIやRPA等のツールを活用してプロセス改善できる人が重宝される
- 積極的に自分の仕事を自分でなくすことができる人は重宝される
- 単純作業をITツールを使ってどのように無くすのか?(事例紹介)
- 恐れず自分の仕事を無くしていこう
1つずつ解説していきます。
AIやRPAはまだまだ万能ではない
これは筆者自身が実際に失敗した事例です。
筆者が初めてRPAを知ったのは2017年頃にテレビでRPAが紹介されているのを見て知ったことがきっかけでした。
当時ものすごい衝撃を受けて「これで革命を起こせる。すべての業務をRPAに置き換えよう!」と思ったのでした。
RPAは人間が決めたことしかできない
今思い返せば「そりゃそうでしょw」と突っ込みたくなりますが、RPAはご存知の方も多いかと思いますが、人間が予め組んだシナリオに沿ってしか動きません。
したがって、あれもこれもと人間がやっている業務をすべて置き換えることはできません。
特に、「判断」をしたり「複数のパターンを検討する」というようなクリエイティブな仕事は一切できず、決められた作業をひたすら行うことしかできません。
例えば、経費精算書の中から、乗車駅と降車駅を抜き出して、乗り換え案内で全件検索して、検索結果をスプレッドシートに転記するというような作業です。
RPAの位置認識にはブレが生じることがあるため業務精度は100%ではない
では決められた仕事であれば100%の精度で実施できるのかというと、そうではありません。
RPAにも色々な種類がありますが、重要になってくるのが「人間がやっている作業をどう再現するか」です。
例えば、前述の乗り換え案内を検索する作業を分解してみると、少なくとも下記のようなプロセスがあります。
- 乗り換え案内のサイトを開く
- 乗車駅のウィンドウにカーソルを合わせる
- 乗車駅名を入力する
- 降車駅のウィンドウにカーソルを合わせる
- 降車駅名を入力する
- 検索ボタンを押す
このとき、「カーソルを合わせる」って人間であれば、目で見てマウスを移動させてクリックで簡単にできますが、ロボットには目がありません。
RPAの種類にもよりますが高機能なモデルだと「セレクター」と呼ばれるような画面に表示されている「ボタン」や「入力ウィンドウ」を識別できる機能を持ったRPAもあり、このようなタイプであればある程度高い精度で目的物を認識することができます。
一方で廉価なタイプのRPAだと、画像認識(完全に人間の動作を録画して再現するようなもの)、座標認識(予め、画面の中の高さどれくらい、横どれくらいを指定する)しかできないタイプもあります。
このようなタイプの場合、例えばディスプレイの大きさが変わったらもうそのロボットは動かないということがあります。ディスプレイの大きさが違うため、人間の動作を録画して、再現すると全然違う場所をクリックしてしまい、そこから先に進まないということが起こります。
このように、RPAの精度も100%ではないということを理解しておくことが重要です。
AIやRPAの導入により単純作業系はどんどん無くなっていく
とはいえ、高機能なRPAも多数存在しており、また優れたAIエンジンを搭載したChatGPTのようなサービスも登場しており、単純に決められた作業をひたすら繰り返していくような仕事はAIやRPAに代替されていくことは間違いありません。
実際に筆者の会社でもそのようにしており、社員は一切単純作業をやらずにコア業務と呼ばれるような、論点を検討したり企画を出したりする仕事に集中しています。
単純作業系(ノンコア業務)はRPAに代替したり、外注化したりしています。
AIやRPA等のツールを活用してプロセス改善できる人が重宝される
ではあなたはこの時代に今からどんなスキルを習得すれば良いのか?
それは「AIやRPAを使って業務プロセスを改善できる」スキルを習得すれば良いのです。
少しわかりづらい表現かもしれないのでもう少し噛み砕くと
「自分が作業をしなくても大丈夫な状態を作る」ということです。
積極的に自分の仕事を自分でなくすことができる人は重宝される
筆者の会社では「これは私にしかできない業務なんです」と言う人は1人もいません。
そんなことを言ったら真っ先にマイナス査定の対象となってしまうからです。
実際よほど、超専門店期な科学研究分野のような仕事でない限り、その人じゃないとできない仕事はほぼありません。というか筆者のこれまでの経験では1つもありませんでした。
頑なに自分の仕事を守ろうとする従業員の仕事をほじくり返して、すべてを明るみに出してみたところ、毎月10時間くらいかけていた作業が、実はRPAを使って10分に短縮できるようになった。あるいはそもそも業務自体を止めることができた、というケースもあります。
AIやRPA等のITツールを使って積極的に自分の仕事をなくすことができる人は、
それだけ「仕組化」をすることができる能力を持っている人ですから、その他どんなジャンルの仕事をお願いしても、同じようにどんどん「仕組化」をしていくことができるため、非常に会社にとってはありがたい人材となります。
単純作業をITツール(AIやRPA)を使ってどのように無くすのか?(具体的なやり方紹介)
では実際にどのようにAIやRPA等のツールを使って単純作業をなくしていくのかその手法をご紹介します。
業務を分解してプロセス毎に記述してみる
まず最初にやってほしいことが、今やっている業務をそのまま最小単位まで分解して順番に記載して見ることです。
ここでは前述した乗り換え案内を使った経費精算書のチェック作業について書いていきます。
<プロセスの例>
- 営業担当者から経費精算書をメールで受け取る
- メールを開きファイルを指定のフォルダに格納する
- ファイルを開く
- インターネットブラウザを開く
- 乗り換え案内を開く
- 乗車駅名にカーソルを合わせる
- 経費精算書から乗車駅名をコピーする
- 乗車駅名のウィンドウに貼り付ける
- 降車駅名にカーソルを合わせる
- 経費精算書から降車駅名をコピーする
- 降車駅名のウィンドウに貼り付ける
- 検索ボタンを押す
- 検索結果をコピーして経費精算書に転記する
- 作業を繰り返し全部終了したら
- 経費精算書の精算金額と検索結果転記数値の差異を確認する
- 〇円以上の差異がある場合は営業担当者に対して確認のメールを送る
- 営業担当者からの返答内容を確認し、誤りであった場合は再提出を依頼する
RPA等のITツールに代替できるかどうかは「判断」なのか「作業」なのかの違い
「経費精算書の申請内容が正しいかどうかを確認する」という言葉で表現すると、一見RPA等のITツールに代替することが難しく思えるかもしれませんが、このように分解してみると、1つ1つの作業は非常にシンプルなものであり、RPA等のITツールに代替できる作業とそうでない作業が浮き彫りになってきます。
上記作業プロセスの中で人間にしかできないことがあるとすれば、最後の「返答の内容を確認し、誤りであった場合は再提出を依頼する」というプロセスくらいです。
ここには「返答内容を確認し~」という「判断」が入るためです。
恐れず自分の仕事を無くしていこう
今回は、AIは本当にあなたの仕事を奪うのかどうかについて解説しました。
この記事で紹介したように、AIやRPAはあなたの仕事を奪うものではなく、むしろあなたの仕事を楽にしてくれる、あるいはあなたの出世を助けてくれるツールにもなり得るのです。前提知識がなければただただ戦々恐々とするしかなかったかもしれませんが、せっかくこの記事をお読みになったのであれば今日からどんどん自分の仕事をなくしていきましょう。
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