これから上場を目指そうとしている会社、上場準備を始めたばかりの会社にとっては、上場を目指すにあたっては誰がどんな役割をするのか全く知識がなくてわからないことかと思います。今回は上場に関連する各種プレーヤーの主な役割について解説していきます。
この記事を書いている人
筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。
この記事の内容
- 社内IPOプロジェクトチーム
- 主幹事証券会社
- 監査法人(会計監査人)
- 証券代行会社
- 印刷会社
- IPOコンサルタント
社内IPOプロジェクトチーム
社内にIPOに関するプロジェクトチームを発足させる必要があります。
プロジェクトメンバーは会社の規模にもよりますが3~5人程度のあまり大人数にならない程度のチームで少数精鋭とすることが多いです。
プロジェクトオーナーは社長となりますが、実務をまとめ上げるプロジェクトリーダーには上場経験者を配置することを強くおすすめします。
主幹事証券会社
主幹事証券会社は、証券取引所に上場申請するにあたって推薦人となってくれる会社です。
したがって上場プロジェクトにおいて最も重要なパートナーと言っても過言ではないです。
主幹事証券会社は主に以下の3つの部門と関係してきます。
営業部門
主幹事証券会社の営業部門は上場準備会社の対応の窓口となる部門です。主に公開引受部門によるコンサルティングが始まる前と、東証申請後のバリュエーションの算定、ロードショーのアレンジ等を行います。
公開引受部門
公開引受部門は主幹事証券会社の中でも最も深く関わる部門で、IPOに関するコンサルティングを全面的に行います。公開引受部門の担当者とは嘘偽りなくざっくばらんなコミュニケーションを取ることができる関係性を構築するようにしましょう。
審査部門
審査部門は証券取引所による上場審査に準拠した形で、証券審査を行います。証券審査も本番同様のレベルで行われますので、ここでうまく回答できないことがあったり、回答内容が不十分であることがあった場合には上場準備の期間の延長を提案されることもあります。
コンサルティング費用
主幹事証券会社のコンサルティング費用は月額20万円~50万円程度のランニング費用に加えて成功報酬で500万円程度という会社が多いです。
契約時期
主幹事証券会社を契約するタイミングとしては可能な限り早い段階が良いでしょう。上場準備期間中に行われるありとあらゆる企業活動を事前相談した方が良いため早い段階で契約しておくべきです。
監査法人(会計監査人)
監査法人の主な役割
監査法人は、IPOプロジェクトにおいて主幹事証券会社に匹敵するレベルで重要なパートナーとなります。
上場申請をするには申請期及び申請期の直前2期間、合計3期間の監査証明が必要となります。監査証明とは、企業の財務報告を公正な立場でチェックし、内容に誤りや粉飾がないことを証明するものです。つまり監査法人が会社が行う会計処理に関してNOと言えば監査証明が出ない可能性がありますので、上場を目指す会社は企業会計基準に則った会計処理を行う必要があります。
監査法人との契約時期
監査法人と契約するタイミングとしてはターゲットとする上場年度から逆算して3年前にショートレビュー(上場のための事前調査・予備調査)を実施する必要があります。
証券代行会社
証券代行会社の主な役割
証券代行会社は上場申請会社の株主名簿の管理業務を行います。中小企業では株主数はそれほど多くなく、株式の譲渡制限もあるため、不特定多数の人が株主となることはありませんが上場後は譲渡制限がなくなるため不特定多数の人が株主となります。また配当を行う場合等は煩雑な計算や管理が必要となりこれらの業務を一手に引き受ける役割をの持っています。
証券代行会社との契約時期
証券代行会社は新規上場申請を行うタイミングで定款変更等の手続きが発生するあたりから本格的にやり取りが発生します。また多くの会社は上場後数か月以内に株主総会を迎えるタイミングで上場することが多いため、上場申請期の1年前には契約しておくことが望ましいでしょう。
印刷会社
印刷会社の主な役割
印刷会社は大きく分けて次の3つの業務を行います。
株主総会の招集通知等の印刷
その名のとおり、本業である株主総会の招集通知等の印刷を行います。上場会社のほとんどが宝印刷かプロネクサスのいずれかの印刷会社を利用しています。
開示書類作成のためのシステムの提供
印刷会社は開示書類を簡便的に作成できるように開示書類作成システムを提供しています。開示書類はWordで形式的に作成することも可能ですが、証券取引所のTDネットや、金融庁のEDINETに開示する際には「XBRL」というタグを埋め込んで一定程度プログラム化された文書でアップロードする必要があります。
印刷会社が提供するシステムでは見た目はWordのような操作で書類を作成することができ、データベース連携機能等が搭載されているため、財務諸表数値の更新に合わせて文章中の数字を一括で更新することができる機能もあります。
開示書類の内容チェック
印刷会社は金融商品取引法や会社法に基づく開示書類の最新情報に関するノウハウを持っています。したがって法改正に伴い記載すべき事項が変わったり項目が増えたりした場合にも常に最新の情報を保有しており、上場準備会社及び上場会社に対して情報提供をすることができます。
印刷会社との契約時期
印刷会社との契約時期については上場申請期から逆算して2年前には契約しておく必要があります。3年前からショートレビューを実施し、直前前期には一定程度開示書類の作成トライアルを行う可能性がたかいため遅くとも直前前期には契約しておくべきでしょう。
IPOコンサルタント
IPOコンサルタントの主な役割
IPOコンサルタントはこれまで登場したプレーヤーの中では唯一契約することが必須ではないプレーヤーです。主にプロジェクト全体のマネジメントや、上場申請書類の作成、質問回答書の作成支援等を行います。
IPOコンサルタントとの契約時期
IPOコンサルタントとの契約時期は上場申請会社がどの役割をIPOコンサルタントに求めるかによって変わってきます。
まとめ
いかがでしたか?今回は上場に関連する各種プレーヤーとその役割について解説しました。
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