IPO 上場審査

上場プロジェクトメンバーはどのような構成にするべきか・求められる能力について教えます

今回は、上場を目指そうと思うけど、どんなチーム構成にしたら良いのか?誰がどんな役割を担うべきなのかわからないという方向けに解説していきます。
なお、企業の規模や業界によって各部門に求められる役割は変わるケースがありますので、ここでは一般的な例をあげて解説します。

この記事を書いている人

筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。
また、数多くの上場企業の経営者交流会に参加し、そこで得た他社の上場企業社長や、CFOの見解もノウハウとして有しています。

 

上場プロジェクトのメンバーの例はこちら

  1. 社長
  2. 上場プロジェクト責任者
  3. CFO(最高財務責任者)
  4. 管理本部長
  5. アシスタント2名
  6. (必要に応じて)外部コンサルタント

社長

社長は、IPOプロジェクトの成功において最も重要な人物です。社長が絶対にIPOを達成させるという強い覚悟と情熱を持っているかどうかで上場プロジェクトがうまいくかどうかが決まると言っても過言ではありません。
他社の上場企業社長に聞くと、「最後は社長の情熱と運」と仰っていた方がいたのは非常に印象的でした。

社長には具体的には以下のような能力が求められます。

ビジョン設定と戦略の策定

上場プロジェクトにおいては、企業のビジョンや戦略の設定が非常に重要です。社長は、チームやステークホルダーと協力して、企業のビジョンを明確にし、その実現のための戦略を策定することが求められます。

株主とのコミュニケーション(外部株主がいる場合)

上場企業にとって、株主・投資家とのコミュニケーションは非常に重要です。社長は、株主に対して、企業のビジョンや戦略、財務状況などを適切に説明し、信頼を築くことが必要です。

チームマネジメント

社長は、プロジェクトのチームマネジメントにも重要な役割を果たします。適切な人材の配置や、チームメンバーのモチベーション維持、目標の明確化や戦略の共有など、チームをまとめるための取り組みが求められます。

リスクマネジメント

上場プロジェクトには、多くのリスクが伴います。社長は、リスクの洗い出しや評価、リスクマネジメント戦略の策定など、リスクに対する取り組みが求められます。

企業価値の向上

上場企業にとって、企業価値の向上が重要です。社長は、企業の成長戦略や収益性向上のための取り組みを行い、企業価値の向上につながる戦略を推進することが求められます。

外部環境の監視

社長は、外部環境の変化を常に監視し、企業のビジョンや戦略を適宜修正する必要があります。また、競合他社の動向や市場トレンドの把握も必要です。

上場プロジェクト責任者

上場プロジェクト責任者には「上場を成功に導いた実績のある経験者」を配置することを強く推奨します。必須と言っても過言ではありません。
上場プロジェクトがうまくいくかどうかは、社長以外の条件の部分としては上場プロジェクト責任者にかかっています。上場プロジェクト責任者は、審査の過程において発生する様々な「まさか」を乗り越えて上場を実現に導くことが求められます。このとき重要になるのが法律や、上場規程等の教科書に明文化されていないことを、上場プロジェクトにおいてどう判断するか、証券会社にどのように相談するのかを判断する「勘所」を持っているかどうかです。これは一度経験した者にしかわからない、明文化した表現が難しいですが、実際に上場を経験した責任者であれば、「なんとなくこれは事前に相談しておいた方が良い案件だな。」というセンサーが働くものです。

具体的に上場プロジェクト責任者に求められる役割は以下のとおりです。

強力なリーダーシップ

上場プロジェクトの責任者は、社長に次ぐリーダーとして、チームをリードし、プロジェクトの進捗状況を監視し、目標を達成するための戦略を立てる必要があります。したがって、リーダーシップスキルは非常に重要です。

経営戦略の理解

上場企業は、投資家や株主に対して結果を出すことが求められます。上場プロジェクトの責任者は、会社のビジョンや戦略を理解し、それをプロジェクトに反映することが必要です。

強力なコミュニケーションスキル

上場プロジェクトの責任者は、上層部、投資家、株主、チームメンバーとのコミュニケーションを円滑に行うことが求められます。また、チームメンバーとの意見交換や問題解決をする際にも、強力なコミュニケーションスキルが必要です。

プロジェクト管理スキル

上場プロジェクトの責任者は、プロジェクトの全体的な管理を行う必要があります。プロジェクトの目標を明確にし、計画を立て、リスクを管理し、プロジェクトを監視することが必要です。

技術的な知識と経験

上場プロジェクトの責任者は、技術的な専門知識や経験を持つことが望ましいです。これにより、プロジェクトの開発や実装、保守など、技術的な側面に関して的確な判断や指示ができます。

人材管理スキル

上場プロジェクトの責任者は、優秀なチームを編成し、メンバーのモチベーションを維持し、能力を最大限に引き出すことが必要です。

 

CFO(最高財務責任者)

上場企業において、大きな課題となることの1つとして、有価証券報告書の作成や、決算短信等、法令や東証の上場規程に基づいた開示書類の作成並びに監査法人の監査対応があります。CFO(最高財務責任者)は、全面的にこれらの会計面を中心に役割を担うことになります。CFO(最高財務責任者)の右腕として財務経理部長を配置する会社もあれば、CFO(最高財務責任者)が財務経理部長を兼務することもあります。

具体的にCFO(最高財務責任者)に求められる役割は以下のとおりです。

 

財務管理

CFO(最高財務責任者)は、企業の財務管理に関する業務を担当します。投資家や株主とのコミュニケーション、企業の資金調達や予算管理、財務報告など、企業の財務に関する重要な決定を行い、財務の健全性を維持するための取り組みを行います。

開示書類の作成

CFO(最高財務責任者)は、金融商品取引法に基づく有価証券報告書や、東証の上場規程に基づく決算短信等の業績を説明するための開示書類を作成する役割を担います。

監査法人とのコミュニケーション

上場企業においては、四半期に一度監査が行われます。四半期決算は概ね1.5か月、年度決算は3か月間かけて作業をしますので、1年のうち、実に7.5か月は決算作業をしていることになります。その間、監査法人からの財務諸表監査、各種質問状の対応、内部統制監査、IT統制監査の対応等、CFO(最高財務責任者)が会社の窓口として対応をすることになります。CFO(最高財務責任者)の対応の仕方次第で、監査手続がスムーズにいくかどうか決まると言っても過言ではありませんので非常に重要なポジションです。

リスクマネジメント

CFO(最高財務責任者)は、リスクマネジメントにも重要な役割を果たします。リスクの洗い出しや評価、リスクマネジメント戦略の策定、リスク管理の実行など、リスクに対する取り組みを行い、企業の安定的な運営を支援します。

業務プロセスの最適化

CFO(最高財務責任者)は、内部統制を強化しつつも、企業の業務プロセスを最適化するための取り組みを行います。業務の改善や効率化、情報システムの活用など、業務プロセスの改善に関する決定を行い、企業の生産性向上に寄与します。

管理本部長

管理本部長は、人事、労務、総務、法務、情報システム部門等、財務以外のバックオフィス業務を一手に引き受けることが多いため、非常に幅広い知識と、チームマネジメント能力が求められます。特に近年では、36協定の遵守状況や、景品表示法に基づく広告審査の観点等、特に法令遵守の状況を厳しく審査されることがトレンドとなっています。

具体的に管理本部長に求められる役割は以下のとおりです。

人事管理

管理本部長は、企業の人事管理に関する業務を担当します。人材の採用や配置、育成、評価、退職など、企業の人事に関する重要な決定を行い、人材戦略の実行を行います。

労務管理

管理本部長は、人事・労務関連業務の運営・管理を担当します。具体的には、採用活動や人事制度の策定、従業員の教育・研修、人事評価制度の運用、勤怠管理や給与計算、退職・再雇用など、人事・労務に関する業務を統括します。

労務管理におけるリスクマネジメント

管理本部長は、企業にとっての労務管理におけるリスクを洗い出し、評価することが求められます。社会保険・労働法に関する知識を持ち、労務管理における法的リスク、過重労働リスク、社会的リスクを最小限に抑えるためのリスクマネジメントを行います。

従業員とのコミュニケーション

管理本部長は、従業員とのコミュニケーションを円滑に行うことが求められます。従業員の問題や悩みを聞き、それを解決するための施策や制度を検討することで、従業員のモチベーション向上に貢献します。

経営層への報告・提言

管理本部長は、従業員とのコミュニケーションや、日常的な業務執行を通じて得た情報を、経営層への報告・提言を行うことが求められます。人事・労務に関する情報の提供や、課題や問題点の報告、改善提案などを行い、経営層の意思決定に役立てます。

 

アシスタント2名~

見落としがちなのがアシスタントの重要性です。特に証券審査の期間や、東証の上場審査においては、短期間の間に大量の資料を提出することになります。
単純な誤字脱字があるだけでも会社の管理体制に対する心象は悪化してしまいます。また、提出用ではなく内部用の資料を提出してしまった等の資料の提出間違いは審査においては命取りになることもありますので、提出する前に最終的にチェックする体制を作るためにはプロジェクトの中心メンバーが作業を行うのではなくアシスタントが作業を行い、プロジェクトメンバーがチェックをする体制を構築しましょう。

アシスタントに求められる役割は以下のとおりです。

スケジュール・タスク等の管理能力

アシスタントは、スケジュールやタスク、メールなどの情報を管理する必要があります。そのため、管理能力が非常に重要です。スムーズな運営のために、効率的に情報を整理し、必要な情報を素早く把握することが必要です。

コミュニケーション能力

アシスタントは、社長やプロジェクトメンバーとのコミュニケーションを円滑に行うことが求められます。期日がぎりぎりになりそうな場合には積極的にコミュニケーションを取り、対策を講じるように促したり、適切かつ客観的に情報の共有・報告を行うことが求められます。また、協調性を持って、チームプレイヤーとしての役割を果たすことが大切です。

主体性

アシスタントは、プロジェクトメンバーや社長からの指示を待つだけではなく、積極的に主体性を持って行動していく必要があります。上場プロジェクトを達成させるという目標と、目標達成のために何をすべきなのかを理解し、それを達成するために自発的に行動し、責任を持って業務を遂行することが必要です。また、自分で考え、行動することで、上司の負担を軽減することができます。

秘密厳守に対する高い責任感と意識

アシスタントは、上場プロジェクトにおいては、会社に取って最高レベルの機密情報にアクセスし、扱うことが多いため、機密情報の取り扱いに対して高いレベルの注意力や責任感を持っている必要があります。

(必要に応じて)外部コンサルタント

実績の多いIPOコンサルタントは、その時々の審査のトレンドを持っていたり、複数の会社に関与していることから、上場申請書類の作成のノウハウも多く有しています。

一方で、コストがかなり高額になることが多く見積りの形式としては人月単価での請求となり、1人月あたり150万円~300万円程度になることもあります。
詳しくはコンサルティング会社に問合せをして確認してみましょう。

実績のある有名なコンサルティング会社としては、常駐型で開示書類の作成から上場申請書類の作成までワンストップで行うことができるAGSコンサルティングhttps://ipo.agsc.co.jp/や、印刷業務のコンサルティングも行っている宝印刷https://www.takara-print.co.jp/ 等があります。

まとめ

今回は上場プロジェクトメンバーはどのような構成にするべきかについて解説しました。あなたの会社の上場プロジェクトの成功の一助になれば幸いです。

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