上場を目指してみたい、東証の上場審査はとても厳しいという話を聞いたことがあるけど実際どんなスケジュールで何が行われるのか教えて欲しいというお声を頂くことが多いため、実際に筆者が経験したスケジュールをもとに一般的な東証審査のスケジュール(グロース市場)の詳細について解説していきます。
他のサイトでは公表していないような実務における役立ちポイントも書いていきます。
この記事を書いている人
筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。
東証審査のスケジュールは以下の流れで行われる
- 東証に上場申請
- 第1回質問事項の受領
- 第1回ヒアリング
- 第2回質問事項の受領
- 第2回ヒアリング
- 第3回質問事項の受領
- 第3回ヒアリング
- 監査役面談・独立役員面談・社長面談
- 社長説明会
- 上場承認
- ロードショー
- 上場日
東証審査を対応するメンバーについて
東証の審査対応については会社によって異なりますが以下の2パターンがあります。
Aパターン(社長が全面的に対応する)
社長が全面的に対応することで、上場審査部に対して情熱的に物事を伝えることができるメリットがありますが、社長がすべての分野において回答をすることは、組織的な経営体制が構築できていないのでは?という印象を与えかねません。また、すべての分野において深度ある正確性の高い回答をすることは現実的に困難です。
社長という最高経営責任者が対応するわけですから、社長が回答したことがすべてを決定しまいますので、リスクが高いフォーメーションであると言えます。
Bパターン(社長はポイントで対応する)
もう1つのパターンは、社長、事業責任者、上場プロジェクト責任者(一般的にはCFOであることが多い)、管理部・総務部等の責任者+2名程度のアシスタントというチームを組んで対応する方法です。
Aパターンの逆で組織的な経営体制が構築されていることをアピールできるとともに、分野ごとに担当者が深度ある正確性の高い回答をすることができます。
うまく機能させるためには、回答に詰まった場合や、うまく返せないときにどのように立ち振る舞うのか予め役割分担を明確に決めておく必要があります。
審査スケジュールに関して注意点
質問事項の受領から、ヒアリングまでの間は大体1週間程度間が空いています。
質問事項の回答書は、可能な限り早く上場審査部に提出することが求められますが、現実的には早くても2日前、通常は前日の提出となります。
そうすると受領してから提出までに5日程度余裕があるのかと思うとそうではなく、ほぼ間違いなく主幹事証券会社の公開引受部門が事前に質問回答書の内容チェックを行いフィードバックを受け、修正の対応をしてから上場審査部に提出することとなります。
つまり事実上、質問事項を受領してから質問回答書を作成するまでには2日~3日程度しか時間がありません。これは第1回~第3回に共通して言えることですので、十分なリソースを確保しておきましょう。
東証に上場申請(N日※)
※東証に上場申請する日をN日としてスケジュールを表現していきます。
日付はあくまでも目安であり暦の関係で前後する可能性があります。
東証に上場申請する日は上場申請書類一式を電子データと紙面データで提出の上、1回目の面談を行います。
具体的には、事業内容、上場申請理由、会社の沿革、業界環境等についてのヒアリングがされます。
第1回質問事項の受領(N+7日)
第1回質問事項では、会社の全体像を把握するために、事業内容、沿革、業界環境、仕入・生産・販売の状況等について書面で質問をされます。
回答にあたっては東証が指定するフォーマットで回答する必要があります。
番号が章立てされていますので、回答書にも質問番号を記載し、どの質問に対する回答書なのかをわかるようにする必要があります。
第1回ヒアリング(N+14日)
第1回ヒアリングは、第1回質問事項の回答書を提出した後に行われます。内容は同じく会社の全体を把握するために行われるものです、質問事項に沿って1問ずつ内容の確認をしていきます。
そのとき特に深掘りして質問されることがありますので、回答した内容については誰がどの質問を担当するのか予め決めておく方が良いです。
第2回質問事項の受領(N+21日)
第2回質問事項では、経営管理・内部管理体制、適時開示体制、内部監査、事務フロー等について書面で質問をされます。
第2回ヒアリング(N+28日)
第2回ヒアリングでは、経営管理・内部管理体制、適時開示体制、内部監査、事務フロー等について質問回答書の内容に基づいてヒアリングをされます。
第3回質問事項の受領(N+35日)
第3回質問事項では、経理の状況、予算統制、 事業計画、今後の見通し等等について書面で質問をされます。
第3回ヒアリング(N+42日)
第3回質問事項では、経理の状況、予算統制、 事業計画、今後の見通し等について書面で質問をされます。
第3回ヒアリングでは、経理の状況、予算統制、 事業計画、今後の見通し等について質問回答書の内容に基づいてヒアリングをされます。
監査役面談・独立役員面談・社長面談(N+55日)
監査役面談・独立役員面談については、主幹事証券会社の同席は可能ですが、上場プロジェクト責任者や社長が同席することは基本的にできません。
主なヒアリング事項はコーポレートガバナンスに関する内容や、これまでの監査してきた内容等についてですが、どのような回答をするのかは綿密に打合せとロールプレイングをしてから臨むようにしましょう。
社長説明会(N+60日)
社長説明会は、社長と監査役とIRの責任者で臨むこととなります。
上場申請日と同じように事業の内容や上場後の展開について、自主規制法人の理事に対してプレゼンテーションを行います。
上場承認(N+70日)
審査の内容に問題がなければ上場承認となります。
上場承認の日には新規上場のための有価証券届出書を適時開示します。
ロードショー(N+72~80日)
上場承認されたら一息つくことができるかと思いきや、今度は公開価格を決めるためのロードショー(機関投資家に対してのプレゼンテーション)を行います。
1日4~6件程度、機関投資家との面談(近年はオンライン面談です)を行い事業の内容の説明を行い、想定株価を投票して頂きます。
その後仮条件の決定を経て、ブックビルディングが行われて公開価格が決定します。
上場日(N+100日)
いよいよ上場日です。上場日は、朝の6時頃には決算情報や定款等をTDネットで開示します。
会社によって時間が異なりますが、東京証券取引所へ訪問し上場セレモニーが行われて、あの有名な「鐘」を鳴らすことができます。
これはもう経験した人しかわからない感動がこみあげてきます。
まとめ
いかがでしたか?今回は東証審査のスケジュールについてかなり具体的に解説しましたが、もう少し踏み込んだことを聞きたいという場合は問い合わせフォームか、TwitterのDMからご連絡頂けましたら可能な限り対応いたします。
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