上場準備を開始したら接待交際費は使ってはいけないと聞いたけど本当なの?今回はそんな疑問にお答えしていきます。
この記事を書いている人
筆者は、派遣のアルバイト、タクシー運転手、タクシー会社の運行管理者(内勤業務)、経理、法務等の業務経験を積んだ後、経理BPOや、内部統制コンサルティングで独立し、その後IPOチャレンジ企業にCFOとして入社し、3回の延期を経て30代前半のときに、高卒CFOとしてIPOを達成した経験を持っています。
証券会社の仮審査対応、本審査対応から東証審査まですべてをプロジェクト責任者兼プレーヤーとして対応しクリアしてきた実績があります。
この記事の内容
- 上場準備中でも接待交際費の支出は問題ない
- そもそも接待交際費とは何なのか
- 接待交際費を支出するときの注意点
- 接待交際費支出の稟議書記載例
- 接待交際費として認められないケース
- 接待交際費の支出先の反社調査も事前に行うことを求められる
- 社外役員は接待交際費を支出しない方が良い
- 役員報酬自体の額を増額して接待交際費の支出をしない会社もある
上場準備中でも接待交際費の支出は問題ない
結論からお話すると上場準備中であっても事業に必要な接待交際費の支出であれば支出しても問題ありません。上場準備において接待交際費の支出が論点になりがちなのは、接待交際費は事業経費としての支出か、プライベートでの支出かの判断がつきづらいためです。
そもそも接待交際費とは何なのか
国税庁のホームページによれば、接待交際費とは「交際費、接待費、機密費その他費用で、得意先、仕入れ先その他事業に関連のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」です。
具体的には、取引先を接待するための飲食店での飲食費用や、取引先との接待ゴルフ、取引先に対するお歳暮やお中元の費用等が該当します。
接待交際費を支出するときの注意点
上場準備中であっても接待交際費を支出することは問題ありませんが、プライベートな支出ではないことを明確にするために、近年の上場審査においては主幹事証券会社からは金額の大小に関わらず、「事前稟議の徹底」を求められることが増えています。
接待交際費支出の稟議書記載例
稟議書には概ね以下のような内容を記載の上、経理部長の承認を得る等の稟議体制を構築することが求められます。
- 飲食等を行う予定の年月日
- 飲食等に参加予定の得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- 飲食等に参加する予定の者の数
- その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地
- 接待交際費を支出する目的
また金額や内容だけではなく、会社の誰が、取引先の誰を接待するのかという観点も重要な論点となります。毎回同じ人が同じ人を接待している場合、それは本当に会社の事業拡大につながるのか?という疑問が生じます。
上場会社として株主からお金を預かるパブリックカンパニーになるわけですから、高い倫理観を求められます。
接待交際費として認められないケース
いくら事前に稟議を起案したといっても、接待交際費として認められないケースがあります。通常接待交際費の金額や内容については明確な法律的な基準で「これはOK」「これはNG」というような明文化された基準はありませんが、いわゆる社会通念上相当な額(一般常識的に考えて)と内容は経費として認められるとされています。接待交際費の計上が認められるケースは例えば以下のような例です。
- 私的な飲み会費用支出
これは支出した人に対する給与課税をされる可能性があります。
- 社長と社長の家族が旅行に行く費用支出
これは社長に対して役員報酬(給与)課税をされる可能性があります。
- 水商売関係のお店に対する数十万を超える費用支出
これは支出した人に対する給与課税をされる可能性があります。
接待交際費の支出先の反社調査も事前に行うことを求められる
接待交際費を支出する際に事前に稟議を起案するだけでなく、交際費の支出先に対して反社調査を全件行うということも審査上求められケースが増えてきています。
社外役員は接待交際費を支出しない方が良い
上場準備中に接待交際費を支出しても問題ありませんが、社外役員は接待交際費を支出しない方が良いです。理由は、接待交際費はそもそも事業活動を円滑にするための費用であり、業務の執行性があります。社外役員は業務執行を行うことはできないため、社外役員が接待交際費を支出することは社外性を失わせる可能性が高まるため、社外役員が接待交際費を支出することはやめましょう。
役員報酬自体の額を増額して接待交際費の支出をしない会社もある
会社によっては稟議の申請漏れ、事後稟議の発生による審査への悪影響を未然に防止するために上場準備期間中は接待交際費の支出を行わないという運用ルールを設定する会社もあります。極端なやり方かもしれませんが、上場審査に合格するということを目的にした場合は実効性のある方法の1つと言えます。
まとめ
今回は上場準備を始めたら接待交際費は支出してはいけないのかという疑問に対して審査目線で解説しました。
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